伝わる言葉。その選び方、伝え方。

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渦巻いている色を、晒して、見つめて、濾して、戻す。そんな作業。

 
 

紙とペン

 
私のそばには、常に、紙とペンがあります。
 
それは、私が物書きだから、とかではなく、小さい頃から、ずっと。
 
声に、言葉に出来ない心のふつふつを、見える形にしてくれていたのが、私にとっては紙とペンでした。その日あったこと、思ったこと、消化しきれないこと、嬉しかったこと、なんでもノートに書き連ねるようになったのは、いつ頃だったかな。多分、小学生の頃。初めて行った美術館で買ってもらった、ルノアールの絵が小さくついた日記帳が、そのはじまりでした。
 
 

心のふつふつ

 
小さい頃から、感情を表にするのが下手で、心の中に渦巻いている色々な色を、自分でろ過出来ず、持て余して、周りを困らせたことも多々あった私。多々、というか、そればかりだったように思います。難しい子でした。
 
正義感が強くて、白と黒が自分の中ではっきりしている割に、紙とペンで吐き出す心のふつふつは、とても曖昧で、抽象的なものばかり。多分、頭と心が、ちぐはぐだったんでしょうね。
 
でも、曖昧で抽象的であっても、綴る言葉はいつもとても真剣に選びました。綴る言葉は、適当になんて選びたくなかったんです。ふつふつを、一番きれいに晒してくれる言葉を、真剣に選んでいました。
 
だから、私はいつでも、ことばが大事です。そして好きです。
 
ふつふつを、それなりに上手くろ過出来るようになった今も、ことばは、大切に選んで、使いたい、と思っています。
 
 
 

ことばを選んで、使って、伝える

 
大人になって、小さい頃のように、ただただ心のふつふつをことばにして書けばいいというものでもなくなりました。時と、場合とに分けて、ことばを選んで、使って、伝えることが増えたんですね。年齢を重ねていくとは、こういうことなんだな。
 
そんな時、私は果たしてきちんとしたことばが使えているんだろうか、と、ふと不安に思うことがあります。
 
略語や、流行り言葉など、喋っていて思わず使ってしまうようなことばも色々あるけれど、出来るならば、丁寧で、きれいなことばを使いたい。
 
 
「いい文章を書こうと思ったら、とりあえず『いいな』と思う文章を、読んで、読んで、そしてそっくりそのまま書いてみるのがいい」
 
 
色々な人が、そう同じことを言っています。ことばの並べ方や使い方は、きっと書道なんかと同じ。お手本を見て、真似て、上達させていくものということ。
 
だから、お手本は、目に、耳にした時、心地いいものがいい。
 
 

お手本にしたい人たち

 
自分で選んで、使うのはもちろん、私は、色々な人のことばを見ます。そこからその人それぞれの様々なふつふつが見え隠れして、一番、その人らしさ、を感じるから。そして、そこからたくさんのことを学んだりもします。
 
ことばの選び方、使い方が素敵な人はたくさんいらっしゃいますが、今回はその中から何人かを。
 
 

ミゾイキクコさん

 
フォロワーが約9万人もいらっしゃる83歳の女性。いつも、とても明確に言葉を使っていらっしゃって、私も、こうありたいと思います。


ツイートをまとめた本も出版されているそうです。

 
 

松浦弥太郎さん

 
「暮らしの手帖」の前編集長でCOW BOOKS代表。たくさんのエッセイも執筆していらっしゃいます。丁寧に使う言葉が印象的。

くらしのきほんHP「くらしのきほん」

時代が過ぎても、決して古びない、ほんとうに知りたい、価値のある基本を発信する、衣食住、暮らしに必要な基本のアーカイブ

 
慌ただしく毎日を過ごしていた時、丁寧に伝わってくることばに、はっとさせられたことは何度もあります。

 
 

Shimiさん

 
何気なくいきついたブログだったのですが、そこに連なったことばが、とても柔らかで、素敵で。伝えたいことに向き合って、ことばを選んで、紡いで、という流れが目に浮かぶような文章です。

shimi-blog-icon「キミに理解されたくないこと。」

はなうた横丁(Shimiさんのブログ)より

 
Shimiさんは、ブログを書く時に「身近な誰かに向けて書く」ようにしているんだそうです。
 
 

やまだめがねさん

 
やまだめがねさんはミニマリスト。シンプルな言葉の中に、丁寧に暮らしている様子が映し出されているようです。

ミニマムな暮らしミニマムな暮らし

 
暮らし方も、とても素敵です。シンプルがいい。
 
 

お手本にしたい古のことばたち

 
新しいことばは、日々生まれています。2018年1月に発売になった広辞苑の第7版には、「自撮り」「ちゃらい」「無茶振り」など、約1万語が追加になったそうです。
 
では、その分古いことばが廃れていっているいるかといえば、そういうわけでもない。古いことばの魅力は、どれだけ年月が経っても褪せることはないように思います。その響きだったり、かなの連なりだったり、目にするだけで「あぁ素敵だなぁ」と思わせられることばがたくさん。
 
大人になってから、学生の頃古文で習った随筆や小説を魅力的に感じるようになりました。特に、大和言葉が使われたものを声に出して読んだ時の、そのなんとも言えない美しさがとても心地良くて。
 
今でも、手紙等では目にすることはありますが、口語としてはなかなか。でも、ごく自然に大和言葉を使っていらっしゃる方をお見かけする時があります。とても上品で、かつ可愛らしくて、たおやかで。私も、あんなふうに自然に使えたらいいなと、思います。
 

 
 
 

あとがき

 
私はよく、家族にも友達にも、手紙を書きます。記念日にはもちろんですが、ふとした時に、何かを伝えたい時にも。その人の字で、ことばで、したためられた手紙には、声でも伝わらないちいさな思いも、ちゃんと乗っている気がするんです。
 
最近は、手紙派な私に感化されたのか、普段手紙なんて書かない父も誕生日プレゼントにカードを添えてくるようになりました。
 
 
さてと。最近会っていないあの子に、お手紙でも書こうかな。
 
 

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