and live.
誰もが通る誰も知らない道。
悩みに悩んで、しんどくて、苦労した10代。多分少ないくない数の人が、そういう10代を過ごしてきたんじゃないでしょうか。
その頃の悩みやしんどさは、誰もが経験することだから、大人からしてみれば「あーそうね。よくあることだから」と、一言で片付けてしまえそうに思うけれど、でも、違う。
誰も通ったことのない道を通っているから明確な助言もアドバイスも本当は出来ないし、その道を通る本人が、探しながら探りながら先を見つけていくしかないんですよね。
その道すがら、色んな人に会って、色んな価値観に触れて、色んなことを思って、そしてまたずんずん進んでいくんです。
It’s Kind of a Funny Story
まったく思いもよらない場所で、心の拠り所を見つけるティーンの物語を描いた、元気の出るコメディ。ザック・ガリフィアナキス、キーア・ギルクリスト、エマ・ロバーツ、そしてローレン・グレアムが共演。自分の頭の中は、自分で思っているほど狂っているわけじゃない場合もある。ストレスで押し潰されそうに感じている、ティーンのクレイグ(ギルクリスト)の場合が、まったくそれだった。少し世間から休養を取ろうと、クレイグは精神クリックに自ら入院する。そこで彼は、想像もしない助言者(ガリフィアナキス)と、芽生えそうな恋の相手(ロバーツ)、そして再出発の方法を見つけるのだった。キュートな中に、ウィットと気の利いたセンスが光る、ちょっとおかしい成長物語。
コメディ、ではない。ちょっと考えさせられる話。
邦題は「ちょっとおかしな物語」、原題は「It’s kind of a funny story」。
紹介文でも「ちょっとおかしい成長物語」とあるけれど、コメディ要素があるのはほんの一部で、話の軸は、自分の中にあるもやもやとどう対面していくかということ。あはははと笑って観るコメディではなく、くすっと笑える場面がある中に見える、人の抱える悩み、それに向き合うしんどさ、周りを考える優しさがゆっくり心に染みてくる映画でした。
だからなのか、映画を観た後、タイトルの「ちょっとおかしな物語」に少し違和感を感じて。
いや、確かに邦題は原題の直訳でそのままなんですが、なんというか、個人的には、原題には少し自虐的な感情が入っているような印象。
「いや、変な話なんだけどさ…」で始まって、ちょっと笑いながら自分の辛かった過去を話して、周りから「いや、笑い話じゃないでしょ、それ」って突っ込まれるような感じ。
その微妙な英語のニュアンスを、和訳に入れる難しさをとても感じました。翻訳って本当に難しい。
ちなみに、この映画には原作があるそうです。文章で読むとまた違った印象になるんだろうな。
文化の違い。だけど、もう少し気軽に話せたら。
主人公が葛藤したり悩んだりしているのは、「みんな悩んできたことだから」と片付けられてしまいがちな10代の悩み。
この映画が何より良かったのは、それを「そんなことで悩んでるの?」と周囲の大人が片付けず、ちゃんと向き合ってくれていたこと。
舞台が病院だったから、ということもあったのかもしれないけれど、それだけでもなんだかちょっと救われた気持ちになりました。
悩みに大きいも小さいもない。年齢も関係ない。状況、環境、性格、いろんなことが折り重なって出来た悩みは、10代だろうが、20代だろうが、80代だろうが、苦しいものは苦しいんです。
似たような経験をした人は過ぎ去ったことだから「そういうことあるよねー」なんて軽く言えるけれど、その渦中にいればそんな軽いことは言えない。
苦しくて、悩んでいても、それをどうやって解決したらいいかわからなくて、どんどん内にこもって、底から出られなくなる、という状況もあったりで、ニュースでも、毎日のように、心臓がぐーっと苦しくなるような出来事がたくさん報道されていて。
そういった心のうちでぐるぐる渦巻いていることを、日本は外に出しにくい環境だなぁと思います。
心療系のクリニックやカウンセリングに行くことを白い目で見る人もまだまだ多い。「甘えてる」なんて言葉で片付けてしまう人も多い。
人によって、苦しい出来事への許容範囲は違うし、対処する能力だって違う。そんな「個性」をなかなかうまく理解してあげられない環境にある、と思うんです。
その点、アメリカは比較的心の不調に対する理解があるなぁ、と感じました。色んな映画でも出てくるけれど、「カウンセリング」というものがみんなの意識の中に当然のようにあって、それを利用する人も多い。「心がなんだかもやもやするなぁ」くらいの感覚ででも、カウンセリングに行く人も多いそうです。
ちなみに、アメリカではほとんどのカウンセリングが保険も適用になるんだとか。
文化の違い。だけど、日本ももう少し、そういったことに寛容になれたいいのに。
やったことがないことをやってみる
主人公が、自分のもやもやに向かい合えたのは、「いや別にやらなくていいよ」と最初断ったことをやってみたことがきっかけでした。
何が自分の助けになるかなんてわからない。自分に意外な才能があるのかもしれない。
先入観で生きるんじゃなく、好奇心で生きる人生を送りたいものです。
あとがき
映画の邦題は、よく意訳されていたり、売れた映画にあやかって同じようなタイトルを付けられていたりしますが、その映画を作り上げた人が決めた大事な名前なんだから、わざわざ変えなくても、原題のままでいいんじゃないかなぁと個人的には思います。
まぁこの映画邦題問題はたくさんの人が声を上げていまして。
配給会社も、映画をより多くの人に観てもらうためにやっているそうなので、仕方のないことなのかもしれないけれど。
うーん。私は、そのまんまの魅力を、そのまんま受け止められる人間でいたいです。
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